十年の集大成、異色の短篇集より
いろいろな学者さんや宗教者の方たちと、シンポジウムでディスカッションなどしますでしょう。そうすると、この人たちは本当に自分とは違うなあ、と思うんですよね。皆さん高い意識、知性と経験をお持ちで、素晴らしいお仕事をされています。それはとても長い年月をかけて蓄積してきたものですから、いきなり私の目の前に出てきても、高級すぎて食べにくいんですね。消化不良を起こしてしまう。もし私がそれと同じことを書くのなら、学者になればいいんです。私がしたいのはその高級なことをできるだけ「くだらなく」書くこと。こんなことを言うと読者は怒るかもしれません。あなたもっと立派な小説を書きなさいよって言われそうですよね。でも、どう「くだらなく」できるかが私の目標なんです。それが作家になった使命だとすら思っています。だけど、ぜんぜん足りないのね。まだ偉そうに書いていますよね。「くだらない」って言うと誤解されそうだけど、ギャグとも違うし、やっぱり「くだらない」としか表現できないんだけど。
「いきなり私の目の前に出てきても、高級すぎて食べにくい」という表現が面白い。
私も今の仕事で日々出会えるハイレベルな先人たちに対して、まさにこんな感想を持っている。ランディさんの「くだらなく」は、難しい物事を一般に伝わるように「わかりやすく」したいということを作家らしいプライドで表した言葉だと解釈し、共感した。
私は、高級な味を学びながら、それを中小企業の経営者が「食べやすい」ように提供し、「消化不良」を起こさず現場まで栄養として届ける、という「わかりやすく」を目指していきたいからだ。